認知症の方の遺言は有効なのか?無効なのか?
医者から認知症の診断を受けている方が遺言を残して亡くなっていた場合、その遺言の効力は有効?無効?というご質問をよくいただくので相続に詳しい税理士が解説します。
遺言の内容が有効と判断されるには遺言者(書いた人)の意思能力が必要
認知症の診断を受けている方の相続が発生し遺言が見つかると、その遺言の有効性をめぐって相続人が争いをするケースがあります。
このようなケースでは被相続人(亡くなった方)が遺言を遺した時点で意思能力があったかどうかで有効・無効が判断されることが多いです。
ただし遺言を書いた時点で医者から認知症ではないという診断書をもらっているケースは稀なため主に以下のような事情を考慮して意思能力の有無が判断されます。
①遺言の内容の複雑さ
遺言の内容として「不動産・預貯金を含む全ての財産を○○に相続させる」というような簡単な内容であれば意思能力があったと判断されるケースが多いです。
逆に、財産が多く種類も豊富で「家は妻に、〇〇銀行の預貯金は半分妻で半分長男に、株式は次男に、別荘は兄弟に」など複数人に割合を指定するような内容だと複雑と判断され意思能力がなかったと判断されるケースがあります。
②長谷川式認知症スケールの点数
長谷川式認知症スケールとは、認知症の判断に使用される認知機能テストです。
長谷川式認知症スケールの点数だけで意思能力があったかなかったかを判断されることは少ないですが判断の材料にされることがあります。
また一般的に公正証書遺言(公証役場で公証人の立会いの下で作成する遺言)は、自筆証書遺言より有効性が高いと判断されますが長谷川式認知症スケールの点数が低いケースでは公正証書遺言であっても無効と判断されるケースもあります。
③医療記録や介護記録
医師による診断書と介護の記録から、被相続人(亡くなった方)が遺言を書いた時点で意思能力があったかを確認するケースもあります。
遺言の有効可能性が高い場合でも要注意
ここまで記載のとおり本人の判断能力がない場合遺言などの対策をしていても無効になってしまいます。
そのため、遺言を含む生前対策(相続税対策・家族信託・生前贈与など)を行う場合には元気なうちに実施する必要があります。
遺言は一度書いても元気なうちであれば書き直しをすることも可能です。
認知症になりそうになったら書きたいというご意見もよく聞きますが、まずは元気なうちに準備しておき、その後心情の変化や財産の変化があった場合に書き直すことがおすすめです。
また下記のケースでは認知症でなく元気なうちに書いた遺言であっても無効になる可能性があるため注意が必要です。
遺留分を侵害している遺言
遺言の内容が「全ての財産を長女に相続させる」と記載されていて相続発生時に妻や長女以外の子供がいるなど相続人が複数いる場合遺留分を侵害していまっているため無効になるケースがあります。
遺留分とは法定相続人に認められている最低限保証されている相続分です。
専門家に依頼するには?
遺言執行など複雑な手続きの処理をまかせるのであれば、やはり専門知識をもった専門家にその職務を依頼することが望ましいです。
当事務所では自筆証書遺言を作成するときの指導や公正証書作成、相続開始まで遺言書の保管などのお手伝いも承っております。
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